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食品の抗酸化能評価に関する研究 ―HORAC 分析法の検討― 2014年度(平成26年度) | 資料集 | 大分県産業科学技術センター

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(1)

食品の抗酸化能評価に関する研究

―H-ORAC 分析法の検討―

徳田正樹・廣瀬正純

食品産業担当

Research of Antioxidant Abirity Evaluation of the Food

-Examination of Hydrophilic Oxygen Radical Absorbance Capacity (H-ORAC) Methods-

Masaki TOKUDA・Masazumi HIROSE

Food Industry Section

要 旨

食品の抗酸化能に着目した商品開発や技術相談に対応するため,抗酸化能評価法であるH-ORAC法について、当センターでの評価体制

の整備および評価技術の確立を目的として,(独)農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所が配布している「H-ORAC分析法

標準作業手順書」(以下手順書)に基づき分析を行った.

フェルラ酸,カフェ酸については,手順書にある室間共同試験(以下室間試験)の結果と比較しても,精度良く再現性の高い分析が

実施できていた.ヘスペレチンについては,ORAC値がやや低く出る傾向にあった.今後,さらに検討を重ねる必要がある.ケルセチン,

カボス果汁については,精度,再現性ともに問題ないと考えられた.

当センターのプレートリーダーでの,各レーン間の測定値の変動について解析を行った.フェルラ酸についてのみ,有意な差がある

と判断されたが,分析の再現性が高いことが理由であると考えられた.したがって,レーン間のORAC値の変動は許容できる範囲にある

ことが確認できた.

1. はじめに

高齢化の進行により,健康に対する欲求は益々高まっている. このような中,食品の機能性を謳った健康食品や健康志向食品だ けではなく,日々口にする食品の機能性についても注目度が増し ている.

機能性成分として多くのものが知られているが,とりわけ「抗 酸化物質」に関しては,過剰な活性酸素を消去することで生活習 慣病を防止し,健康を維持する機能があるということで,消費者 の認知度も高い.

食品の抗酸化能については,これまでに多くの研究が行われて おり,その評価法についても様々な方法がある.米国で開発され たORAC(Oxygen Radical Absorbance Capacity;活性酸素吸収力)法 は,抗酸化能評価の標準手法として,欧米において広く認知され ており,すでに ORAC 値が表示された商品も店頭に並んでいる.

日本でも,大手食品企業や大学,国立研究機関により AOU

(Antioxidant Unit)研究会が設立され,食品の抗酸化力に対する

統一した指標の確立を目指し,ORAC分析法の公定法化(分析値の

妥当性確認)の研究を行っており,本法が抗酸化能評価の標準手 法として定着することが想定される.

さらに,消費者庁においては食品の機能性表示制度に関する検

討がなされ,平成27 年度には新たな食品表示制度が施行されるこ

ととなった.

こういったことから,今後益々,食品への抗酸化能測定値の表

示に対する期待が高まることが予想され,抗酸化能に着目した商

品開発や技術相談に対応するためにも,当センターでのORAC法に

よる評価技術の確立が必要である.

そこで,本年度は手順書に基づき分析を実施することで,分析

の再現性や正確性について検討することとした.

2. 実験方法 2.1 分析試料

手順書で分析の品質管理試料として用いられているフェルラ酸 および室間試験で用いられたヘスペレチン,カフェ酸を試料とし た.

さらに,代表的な抗酸化物質であるケルセチンおよび大分県の 特産であるカボス果汁についても分析を行った.

平成26年度 研究報告 大分県産業科学技術センター

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平成26年度 研究報告 大分県産業科学技術センター

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試 料 名 フ ェ ル ラ 酸 カ フ ェ 酸 ヘ ス ペ レ チ ンケ ル セ チ ン カ ボ ス 測 定 回 数 2 5 1 2 1 8 6 5 分 析 点 数 7 0 5 0 7 2 3 0 2 1 平 均 値   ( μ m o l T E / L ) 1 7 , 2 3 8 3 1 , 6 4 5 2 0 , 0 5 6 2 6 , 4 9 0 6 , 1 3 7 標 準 偏 差 ( μ m o l T E / L ) 4 8 8 . 5 6 8 3 . 7 8 2 3 . 8 1 3 4 7 . 1 2 4 1 . 1 変 動 係 数   ( % ) 2 . 8 2 . 2 4 . 1 5 . 1 3 . 9 真 度 充 足 率 ( % ) 1 0 0 1 0 0 2 2 - - 精 度 充 足 率 ( % ) 1 0 0 9 8 9 3 - -   真 度 : 室 間 試 験 で の 平 均 値 ± 室 間 再 現 標 準 偏 差 の 2 倍

  精 度 : Z ス コ ア < 2 : Z = | 測 定 値 - 測 定 値 の 平 均 値 | ÷ 室 間 試 験 で の 中 間 標 準 偏 差 フェルラ酸,ヘスペレチン,カフェ酸,ケルセチンについては, 各 100mg を MWA 溶液(メタノール 90:蒸留水 9.5:酢酸 0.5)で溶 解し100ml に定容したものを,Assay buffer(75mmol/L phosphate buffer(pH7.4)で 10 倍希釈したものを使用した.

また,カボス果汁は搾汁液を Assay buffer で 10 倍希釈して使用 した.

2.2 H-ORAC 法

手順書に準じて分析を行った.

96穴マイクロプレート(FALCON,♯353072)を用い,プレート リーダー(DTX880型,ベックマン・コールター)にて測定を行っ た.

3. 結果及び考察 3.1 H-ORAC 法による分析

3.1.1 分析結果の解析

各試料の測定値の解析結果を Table 1 に示した.

Table 1 H-ORAC 法による測定値の解析結果

フェルラ酸については,25 回の測定で 70 点の測定値を得た. 得られた測定値を解析した結果,平均値 17,238μmol TE/L,標準 偏差 489μmol TE/L,変動係数 2.8%であった.室間試験の結果と 比較しても,精度良く再現性の高い分析が実施できていること がわかった.

Fig.1 フェルラ酸の分析結果

また,全ての測定値が,手順書による真度(フェルラ酸の室 間試験での平均値±室間再現標準偏差の 2 倍:17,552±1,864

μmol TE/L)および精度(Z スコア<2:Z=|フェルラ酸の測定 値-フェルラ酸の測定値の平均値|÷757(室間試験での中間標 準偏差))を満たしており,分析の信頼性も充分であると考え られる.(Fig.1)

カフェ酸については,12 回の測定で 50 点の測定値を得た.解 析の結果,平均値 31,645μmol TE/L,標準偏差 684μmol TE/L,変

動係数2.2%であり,フェルラ酸同様,精度良く再現性の高い

分析が実施できていた.室間試験の結果を利用して真度と精度 を計算してみたところ,精度について 1 点のみ Z スコアが 2 以 上となったが,真度に関しては全ての測定値が適正な範囲内に あったことから,分析操作時に偶然発生した軽微なエラーが原 因ではないかと考えられる.分析の信頼性については,全く問 題ないと考えている.(Fig.2)

Fig.2 カフェ酸の分析結果

ヘスペレチンについては,18 回の測定で 72 点の測定値を得た. 解析の結果,平均値 20,056μmol TE/L,標準偏差 824μmol TE/L, 変動係数4.1%であり,室間試験の結果と比較すると,ORAC値 がやや低く出る傾向にあった.(Fig.3)

Fig.3 ヘスペレチンの分析結果

平成26年度 研究報告 大分県産業科学技術センター

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平成26年度 研究報告 大分県産業科学技術センター

(3)

全ての分析実施時に品質管理試料であるフェルラ酸を2点以 上分析することで,分析の信頼性を確認していることから,分析 自体に問題はないものと考えられる.また,標準偏差や変動係 数も特に異常値を示しているわけではない.真度と精度を計算 してみると,精度に関しては非常に高いことからも,分析操作 そのものに問題がある可能性は低く,今のところ ORAC 値が低く 出る決定的な原因については不明である.

H-ORAC測定において,ヘスペレチンのようにだらだらと蛍光 強度が減少する挙動を示すタイプの化合物とフェルラ酸やカフ ェ酸のように蛍光強度が減少しない時間があり,その後,急激 に蛍光強度が減少する挙動を示す2つのタイプの化合物がある ことが確認されている.今回,フェルラ酸,カフェ酸について は,精度,再現性ともに充分満足できる結果が得られた一方, ヘスペレチンについては再現性については問題なかったが,測 定値が低めに出るという結果となった.蛍光強度減少のパター ンの違いが,その原因となった可能性も考えられるので,今後, ヘスペレチンタイプの化合物については,さらに検討を重ねる 必要がある.

ケルセチンについては,6 回の測定で 30 点の測定値を得た. 解析の結果,平均値 26,490μmol TE/L,標準偏差 1,347μmol TE/L,

変動係数5.1%であり,精度,再現性ともに問題ないことが確

認できた.また,ケルセチンについては,蛍光強度減少の挙動

がフェルラ酸タイプを示したので,ORAC値についても信頼でき

るものと考えられる.(Fig.4)

Fig.4 ケルセチンの分析結果

カボス果汁については,5 回の測定で 21 点の測定値を得た. 解析の結果,平均値6,137μmol TE/L,標準偏差241μmol TE/L, 変動係数3.9%であった.室間試験のミカンのORAC値と同程度 であることから,妥当な数値ではないかと考えられる. (Fig.5)

3.1.2 マイクロプレートの各レーン毎の分析結果の解析 本分析に使用するプレートリーダーには機種に固有な特性が

Fig.5 カボス果汁の分析結果

あり,理由は不明であるが測定するレーンにより,ORAC 値が大 きくなったり小さくなった りすることがわかっている.また, 同一メーカーの機種を用いてもこの現象は起こり,ORAC 値が大 きくなったり小さく なったりするレーンは異なる.当センター の機器で,各レーン間の測定値にどの程度の変動があり,その 変動が許容できる範囲にあるか解析を行った.

フェルラ酸の各レーン毎の測定値の解析結果を Table 2,Fig.6 に示した.

Table 2 フェルラ酸の各レーン毎の測定値の解析結果

Fig.6 フェルラ酸の各レーン毎の測定値

一元配置分散分析の結果,P-値は 0.028 であった.有意水準を レ ー ン 番 号 平 均 値   標 準 偏 差 変 動 係 数   P - 値

  ( μ m o l T E / L )   ( μ m o l T E / L ) ( % )

2 1 6 , 8 3 9 4 1 3 . 1 2 . 5

3 1 7 , 2 3 6 5 8 5 . 4 3 . 4

4 1 7 , 6 2 9 6 2 7 . 4 3 . 6

5 1 7 , 3 5 6 3 4 6 . 3 2 . 0

6 1 7 , 0 0 1 3 6 5 . 9 2 . 2

7 1 7 , 3 4 1 2 6 4 . 7 1 . 5

8 1 7 , 2 7 8 3 4 1 . 8 2 . 0

9 1 7 , 5 0 3 3 1 6 . 5 1 . 8

1 0 1 7 , 3 5 3 4 7 9 . 3 2 . 8

1 1 1 6 , 8 8 9 5 9 2 . 8 3 . 5 0 . 0 2 8

平成26年度 研究報告 大分県産業科学技術センター

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(4)

5%に設定した場合,統計的に有意となり,グループ間で 有意差 があることが示された.そのため,フェルラ酸についてはレー ン間で ORAC 値の平均値に有意な差があると 統計的に判断され る.

しかし,フェルラ酸の ORAC 値については,真度,精度ともに 問題はないことから,分析自体にも問題はないと考えられる. フェルラ酸で有意差が出た理由は,分析の再現性が高いためで はないかと推測される.通常はレーン特異的な ORAC 値の変動よ り,分析手技による変動の方が大きくなり,有意な差は出ない のではないかと考えられる.

同様にカフェ酸,ヘスペレチンについての解析結果を,それ ぞれ Table 3,4,Fig.7,8 に示した.

P-値はそれぞれ0.131,0.301であった.有意水準を5%に設定 した場合,グループ間に 有意差はなかった.

以上の結果より,レーン間の ORAC 値の変動は許容できる範囲 であることが確認された.

Table 3 カフェ酸の各レーン毎の測定値の解析結果

Fig.7 カフェ酸の各レーン毎の測定値

4. 今後の計画

フェルラ酸タイプの蛍光強度減少のパターンを示す化合物につ いては,当センターで H-ORAC 法による抗酸化能測定が可能となっ たことから,ヘスペレチンタイプの化合物について,ORAC 値が低 く出る原因を解明し,H-ORAC 分析法の評価体制の整備および評価 技術の確立を目指す.併せて,センター独自の分析手順書を作成

Table 4 ヘスペレチンの各レーン毎の測定値の解析結果

Fig.8 ヘスペレチンの各レーン毎の測定値

する.

DPPH 法について,分析の再現性や精度の検討を行い,ORAC 法を 補完する分析法として技術の確立を図っていく.

また,手順書では分析に用いる試料の,食品からの抽出法につ いては十分検討されていないので,試料調製法や抽出液の保存性 についての検討も加え,試料抽出から分析までの一連の操作が問 題なく実施できる体制を整備したいと考えている.

参考文献

(1)食品総合研究所他:H-ORAC 分析法標準作業手順(2013) (2)九州沖縄農業研究センター:DPPHラジカル消去活性測定法

(2009)

(3)渡辺純,沖智之,竹林純,山崎光司,津志田藤二郎,食品の 抗酸化能測定法の統一化を目指して,化学と生物(2009) (4)津志田藤二郎,標準となる抗酸化能測定法の選定と抗酸化指

標の表示について,食品と開発(2010)

(5)大脇進治,食品の抗酸化指標「ORAC」分析とその展望,食品 と開発(2010)

(6)山梨県工業技術センター研究報告:地域特産物の抗酸化力向 上に関する研究(2011)

(7)Watanabe et.al.,Analytical Sciences(2012) レ ー ン 番 号 平 均 値   標 準 偏 差 変 動 係 数   P - 値

  ( μ m o l T E / L )   ( μ m o l T E / L ) ( % )

2 3 0 , 7 6 0 8 3 1 . 4 2 . 7

3 3 1 , 7 7 0 5 5 3 . 4 1 . 7

4 3 1 , 9 1 8 5 4 7 . 9 1 . 7

5 3 1 , 6 3 6 6 5 5 . 7 2 . 1

6 3 1 , 9 4 7 6 1 4 . 0 1 . 9

7 3 1 , 5 0 3 9 8 4 . 7 3 . 1

8 3 1 , 7 1 0 6 9 3 . 1 2 . 2

9 3 1 , 9 1 0 4 9 3 . 1 1 . 5

1 0 3 1 , 9 5 5 4 1 5 . 7 1 . 3

1 1 3 1 , 3 4 3 4 4 3 . 6 1 . 4 0 . 1 3 1

レ ー ン 番 号 平 均 値   標 準 偏 差 変 動 係 数   P - 値

  ( μ m o l T E / L )   ( μ m o l T E / L ) ( % )

2 1 9 , 6 7 6 9 7 6 . 3 5 . 0

3 2 0 , 0 0 5 9 4 2 . 5 4 . 7

4 2 0 , 2 2 6 8 6 4 . 3 4 . 3

5 1 9 , 6 4 3 8 8 2 . 6 4 . 5

6 2 0 , 1 3 6 9 3 8 . 3 4 . 7

7 1 9 , 5 0 2 8 0 1 . 8 4 . 1

8 2 0 , 3 2 2 7 8 0 . 1 3 . 8

9 2 0 , 3 9 9 8 0 5 . 5 3 . 9

1 0 2 0 , 4 8 4 4 2 8 . 7 2 . 1

1 1 2 0 , 1 6 7 5 3 0 . 6 2 . 6 0 . 3 0 1

平成26年度 研究報告 大分県産業科学技術センター

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平成26年度 研究報告 大分県産業科学技術センター

参照

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